YUKI FUJISAWA

   I find LOVE   

I find LOVE

愛とは一見、輝かしく美しいものである。だが本当のところはとても複雑で、理想と現実は異なる。LOVE is a brilliant and beautiful thing at first sight, but the truth is really complicated, and it is not always a positive emotion.Reality is different from ideal. しかしそれでも愛を美しいと思うし、そう思いたい気持ちがある。However I would still like to think that love is beautiful. 今は無き愛情の断片を家族写真の中から探し集め、悲しみも愛しさも重ね合わせることで、自分自身にとっての新たな愛の形を表現した。I have used my old family photos to express a form of love which combines happiness and sorrow.
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I find Love

「目にみえないものをテキスタイルで表現する 」というテーマで研究していた透明なテキスタイルによる重なりの表現を追求し、卒業制作にあたって自分の根源と向き合った作品である。

 愛とは単純なものではなく、様々な人間関係や要素が絡み合う非常に複雑なものである。私にとって家族の愛とは憧れの対象であった。幼い頃に両親の離婚という事件が起こってから今までずっと、一体本当の愛とは何なのか分からず、家族に対しどこかで不信感を感じていた。

 愛を失った家族にとって、幸せだった頃の家族写真は一体どのような価値があるのだろうか?一見意味の無いように見える風景、子供の作った紙工作だけをおさめたもの、ピントが合っていなかったりブレている人物。 デジタルカメラの無かった時代、35mmフィルムカメラは撮り直しがきかない故に同じような写真が幾つも残されていた。そういった何気のない瞬間を残したいと思う心情が垣間見える部分に、本物の愛情を感じた。

 写真を時間の経過と共に追っていくと、家族の終わりに近づくに連れ、写真の枚数も笑顔の写真も減っていく。その時期の記憶は私にとって辛く消し去りたいものでもある。しかし裏を返せばそれは物心ついてから唯一残る家族との記憶である。ただ離婚という結果だけをみて悲しく無かったものとしてしまうのではなく、考え方を変えればそれすらも自分にとっては大切な輝かしい記憶であると思えるようになった。この制作を経る中で私は膨大な量の家族写真を初めて手に取り、ちゃんと愛されていたのだとようやく思えるようになった。 だが、それでも家族に対して許せない心が未だに自分の中に残っていることも事実であるし、だけどそれでも家族をとても愛おしいと思う気持ちが確かにあること今は感じることが出来る。

 そういった自身の複雑な感情とテキスタイルの手作業の行為性とに関連を持たせた。 幸せの絶頂の時期の写真には、人物の所にのみグリッター加工がしてある。見る角度によっては像がより鮮明に見え、またある角度から見るとグリッターは光を全面に受け、輝きで像は何も見えなくなる。 終わりに向かっていく時期の写真には箔プリントが施してあり、煌めきながらも人物は塗りつぶされたような表現になる。

 異なる種類のオーガンジーを重ねる順序を計算して配置する事により、透明感の中にも空間が生まれる。家族が始まってから終わるまでの期間の起承転結が幾層にも重なる。

 愛とは一見、輝かしく美しいものである。だが本当のところはとても複雑で、理想と現実は異なる。しかしそれでも愛を美しいと思うし、そう思いたい気持ちがある。そういった複雑な感情を、ある意味愛を探すような祈りにも似た気持ちをこめながら、自分の中での新たな愛の形を表現した。

【 I find LOVE 】 / 2012-2013

size : H157×W225×D60cm / 1work
technique :heat transfer printing, silk screen printing, glitter printing, foil printing
material : polyester

多摩美術大学生産デザイン学科 テキスタイル専攻 卒業制作作品

photo by Mareo Suemasa

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